役に立たないフリーランスの話 その16.テーマが自分と社会のあいだをつなぐ

 三十歳で個人事務所を立ち上げて、環境と教育に関わる仕事をして八年になる。開業当初から「雇われない」と「雇わない」という二つのポリシーをもち続けてきたが、その実態は慢性的な失業者状態と変わりはない。依頼がなければまったく仕事がないわけで、八年間家族とともに暮らしてきたというのは驚異的だと自分でも思うのだ。

 どうしてそれが可能だったのかと考えてみると、「環境」と「教育」というテーマをつねに掲げて、これまでたくさんの人たちと出会ってきたことが、いまの自分の仕事を創ってきたし、また仕事をすることでまた新しい出会いがあるという循環ができてきたからだ。

 「慢性的失業者」が食いはぐれずに、ちょっぴりではあるが世間様のお役にたってきたというのは、ありがたいことに自分にとってふさわしい「テーマ」と幸いにして二十代後半という時期に出会っていたおかげだと思う。

 しなやかなココロとカラダのある若い時期に、さまざまな経験を積んで、自分自身と社会をしっかりと見つめることが大切だろう。それがきっと自分と社会にとってふさわしい「テーマ」との出会いをもたらしてくれるに違いない。

(2002年2月10日 「Colors of Nature」メールマガジン第265号から)

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