役に立たないフリーランスの話 その12.特集「松木正に訊く」

 今回は関西の「環境教育商店街」(自称)のおひとり、マザーアース・エデュケーションを主宰する松木正さんへのインタビューです。彼はアメリカ先住民のラコタ族(通称;スー族)と長く生活を共にし、いまではアメリカ先住民の生き方を教育プログラムのかたちにして、各地でキャンプやワークショップ、儀式などを行っています。

 マザーアース・エデュケーションは環境共育事務所カラーズと独立自営という点では共通(どちらも法人ではなく個人事業主)ですが、カラーズが西村仁志の個人事務所という色が強いのに対して、マザーアースは「共同体」で、松木氏はその中心というような、まさにインディアンの部族のような集団です。なので「フリーランス」とはすこし趣が異なります。

■「独立自営で、生きていくのに必要なこと、大切なことは何でしょうか?」

 共同体の仲間と生きること。自分を助けてくれる人との信頼関係が一番大事。仕事を一緒にやっている人たち(とくに若い人)のスタンスを常に確認している。それは「4年経ったら自立していってもらう」ことにむけて指導しているからだ。

つぎに健康管理。自分が倒れたら終わりやから。そしてお金の管理かな。

■「独立自営でやっていて良かったなと思ったことは?」

 自分で決めて、自分で起こして、自分で回して、ということ。すべて自分の責任でやれるということかな。逆にいうと「他人の責任にしない」ということ。「素直に他人に助けを求められる」ことかな。

 それから「お金の価値やありがたさがわかること」かな。子どもになにかを買ってやるときに「お父さんがこれだけ働いたんやから」という実感がある。貯金が底をついてスッテンテンになったこともある。一回はアメリカから帰ってきた直後。もう一回は阪神大震災のあと。

■「独立自営でやっていてデメリットを感じることは?」

 ない。(ときっぱり)

■「独立自営に向く人、向かない人は?」

 (ある種の)タレント性、カリスマ性のない人はやめたほうがいい。

いろんなことを全部一通りできること。舞台で言うと主演俳優、脚本家、監督…なんでもできるというのが必要。これしか出来ないというのはあかんやろう。

それから、この仕事は「コミュニケーション」が商売。だから人と関われない人はダメ。

■「若い世代に伝えていることは?」

 「あれも、これも出来ない」と自分で自分の器の大きさを決めてはいけないということ。30歳代前半にはほんとうにその人の人間の器の大きさが自他共に決められてしまう。若いうちは「あれも、これも全部一生懸命」でなければいけない。その後飛躍できるかどうかはここで決まる。

■「お互い30代終盤が近づいていますが、30代の総括と40代への展望は?」

 この10年は自分自身に100点満点をあげたい。それくらいがんばった。40代は仕事の場をつくりだす。また次の世代を育て、仕事を渡していくことをやっていきたい。それから新しい自分の可能性も探したい。方向性が二つあって、ひとつは大自然のなかで暮らすということ。しかしもう一方で、自分がどういう流れの中にいるのかを見極めることが必要。つまりまちのなかで教育やカウンセリングなど人のこころや魂とかかわり合うということ。両方の可能性がある。

 いのちや人間の根元、魂の領域にかかわることは自分の使命でもあり、これからも磨きをかけなければならない。「スキル」というよりは一種の芸術、「アート」としてみがいていかねばと思う。

(2001.9.22 「Colors of Nature」メールマガジン第236号に掲載したものです)

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