2011年02月 アーカイブ

2011年02月18日

今期の修士論文を読んで(2)〜論文に書く「研究の目的」について

修士論文公聴会で、ある院生にこんな質問をした。「京都から富士山の頂上を目指す研究ですね。しかし研究の成果として、富士山の8合目まで行けたのか。5合目までなのか、はたまた富士宮までか、浜松なのか、もしかすると大津あたりにいるのかわからない。あなたはどこまで行ったつもり?」
つまり「研究者が人生をかけて追い求めるテーマ」みたいなものを「この論文の目的」に書いちゃいけない。研究の目的で「京都から富士山の頂上まで行く」と書いてあるのに、結論では「今回の論文では大津までしか行けなかった」という状況では、論文を書いちゃいけないでしょ。
つまりそれは「本研究(論文)の目的」の設定が誤っている。京都から大津まで行けてるんだから、「この論文では大津まで行くことが目的」と書いておけばいい。
研究が終盤になって結論が見え始めてから、論文の「研究の目的」を書き換えることもできる。
さすがに、研究費をとっての研究だと研究目的を最初に明示しているわけなんで、そういうわけにはいかないかもしれないが前期課程の修士論文なら、いっこうにかまわない。
うちのゼミ生(今回は3名が提出)だって、年末になって自分の研究から見えた成果から論文の結論を書き、それに伴って当初の「研究の目的」の文章を微調整している。そして「題目変更届」を出して論題を変更している。
「本研究の目的」で書いたことを100としよう。そして研究の成果(結論)が100だったとする。研究の目的は100%達成されたことになる。いいことのように思える。しかし、実際にはそんなパーフェクトはあり得ない。
目的が100なら、実際に行き着けるのは90とか95。あるいはそのように目的を設定しなおす。そうすると残り5とか10という部分が出てくる。あと5とか10ができれば100にたどり着けるわけだ。それが「本研究の課題」(「本研究に残された課題」)ということになる。そして研究の結果100が見えてくると、130や200、300が射程に入ってくる。これが「この研究の展望」ということになる。
まあ、こんなところが、「研究の目的」と結論、研究の課題と展望の関係だと思っている。

蛇足だが、わがソーシャル・イノベーション研究コースでは実践型研究、とりわけ社会的なプロジェクトの実践を通じて研究し論文を書いていくことになる。院生の勘違いがあとをたたないのが「研究の目的」と「実践の目的」を混同してしまうこと。
実践の目的なので、例えば「持続可能で、すべての人間が公平公正な社会を実現する」なんてこともあるでしょう。しかしこれは研究の目的にはならない。ここまで読んでいただいた方にはわかるだろう。
同様に論文の終盤に「この研究の課題」と書いて、そこに「実践の課題や展望」を書いちゃう院生がいる。「今回は京都市**区での実験的取り組みだったが、今後は市内全域でのサービスインを目指したい。その後は全国展開をめざす。」いやいや心意気は立派なんだが、、、、。
まあ、こういう「実践の課題や展望」は、自身の将来やキャリアデザインとあわせてあとがき風に書いていただければ結構です。

2011年02月17日

今期の修士論文を読んで(1)〜ソーシャル•イノベーションの創出プロセス

12,13日は同志社大学大学院総合政策科学研究科の修士論文公聴会だった。
ソーシャル・イノベーション研究コースの修士論文はこれで4期目になった。たしか37本くらいになったのではないかと思う。今期のものはまだ全部読んだわけではないが、発表はほとんど拝聴した。また今期は初めて博士後期課程の学位論文、つまり博士論文の審査にも関わった。
今期の論文の指導や査読を行って、ようやく解ってきたのは、このコースで書かれる学位論文では単に実践現場を記述すれば良いのではなく、「ソーシャル•イノベーションの創出プロセス」を描き出す必要があるということだ。

ソーシャル•イノベーションの創出プロセスとは、まず自分自身の社会への思いからスタートする。
続いて、ステイクホルダーとの協働関係の創出。この協働関係がクラスターになる。これは政策ネットワークとも言える。このクラスターあるいはネットワークを活用した独創的な社会サービスの開発を行うまでが「ソーシャル•イノベーションの創出プロセス」の前半部分だ。

この社会サービスを社会のなかで実際に運用してみる。そして実際に社会サービス事業を運営してみると、①想定通りの良い結果が得られる。②想定外の良い結果が得られる。③想定通りにはうまくいかない。④予想外に全くダメ。など、いろんなことが起こる。そうして、とくに②に注目して、偶然を必然に変えていく。そうして、社会からの支持(お役にたつ)ことがわかってくる。

そして、ここで終わってはいけないのだ。

自分の社会実践の成功だけに終わったら、ソーシャル・イノベーションはそこでストップしてしまう。ここから次の「希望への戦略」を描く必要がある。自分の実践はどのようにモデルとなり、同様のサービスが求められるところで、適用できるようになるか。そういう「戦略」を描く必要があるのだ。つまりソーシャル・イノベーション研究コースの論文では、こうしたプロセス全体を描き出す必要があるのだ。昨年そして今年の院生の論文を読みながら、ますますその確信が強くなった。

つまり演劇に例えれば「舞台の上」だけ、あるいは「お客さんからの反応」だけを書けばいいのではない。演劇の興行主、つまりプロデューサーの観点で、芝居小屋さがし、スポンサー探し、演出家や脚本家選び、役者のオーディション、稽古、その一方で美術や道具、広報宣伝、チケット売り。などなどである。さらには、この演劇作品が他の地域で上演されていくための戦略を考えることである。これには小劇場運動のような方法も、劇団四季のような方法もあるだろう。

というわけで、ソーシャル・イノベーション研究コースのみなさん。(ってここで見てるのは数人と思うが)ソーシャル・イノベーションの創出プロセスと、ステイクホルダーとの相関関係をちゃんと書いてくださいね。そして、「希望の戦略」もね。

2011年02月07日

シンポジウム「自然学校宣言2011」(西村登場)

西村です。
今回はご案内です。
東京・立教大学で行われる表記のシンポジウム「自然学校宣言2011」に参加し、第5部にて登壇します。
もちろん、最初から最後までおります。
東京・池袋ですが、ご関心のある方はぜひ。

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◆シンポジウム「自然学校宣言2011」

日時:2011年3月2日(水)14時〜20時半
場所:立教大学太刀川記念館3階会議室

昨年度のシンポジウム「自然学校が地域を救う」では、自然学校は
環境教育の場の提供にとどまらず、持続可能な地域づくりの主要な
拠点としての役割を発揮している事例が数多く報告されました。
この成果を踏まえて、今回は、自然学校全国調査委員会によって
2002 年度から4 年ごとに実施されている自然学校の全国調査を
もとに、自然学校が今日果たしている役割を明確にするとともに、
行政、企業、NGO といった自然学校にかかわるステークホルダー
による取り組みの共有化を行い、持続可能な社会構築に果たす
自然学校の展望と可能性について議論をいたします。

【第1部:全国調査報告】(14:00〜14:30)
◇担当:広瀬敏通(日本エコツーリズムセンター代表理事:広瀬敏通)
・開会挨拶(ESD研究センター長:阿部治)
・プログラム紹介(ESD研究センターCSRチーム主幹、
                   日本環境教育フォーラム理事:川嶋直)
・自然学校全国調査報告(広瀬敏通)

【第2部:中央省庁が見る自然学校】(14:30〜15:25)
◇担当:佐藤初雄(自然体験活動推進協議会代表理事)
・各省庁による自然学校に関係する取り組み
1.小野 保(文部科学省スポ−ツ・青少年局青少年課青少年体設活動推進専門官)
2.堀上 勝(環境省総務課自然ふれあい推進室長)
3.福島行我(林野庁森林整備部計画課森林総合利用山村振興室企画係長)
4.福住知宏(経済産業省経産政策局・地域経済産業グループ立地環境整備課開発1係
長)
5.安田吾郎(国土交通省農村振興局農村政策部都市農村交流課担当)
6.遠藤知庸(農水省河川局河川環境課河川環境保全調整担当)
・フリップボードディスカッション

【第3部:企業が取り組む自然学校】(15:35〜16:25)
◇担当:中西紹一(プラスサーキュレーションジャパン代表、
               立教大学ESD研究センターCSRチーム研究員)
・自然学校紹介
1.湯浅 隆(東京電力自然学校)
2.山田俊行(トヨタ白川郷自然学校)
3.藤木勇光(J−POWERエコ×エネプロジェクト)
4.落合 真(ろうきんの森)
・フリップボードディスカッション

【第4部:自然学校類型化の試み】(16:30〜17:25)
◇担当:広瀬敏通
・類型紹介
・類型に沿った自然学校紹介
1.坂元英俊(阿蘇地域コンソーシアム/コンソーシアム型)
2.大武圭介(ホールアース自然学校/社会企業型)
3.飯田 洋(千葉自然学校/ネットワーク型地域再生)
4.大前純一(エコプラス/農的暮らし型)
・フリップボードディスカッション

【第5部:自然学校これからの可能性】(17:40〜18:30)
◇担当:川嶋直
・パネルディスカッション
1.阿部 治
2.佐藤初雄
3.広瀬敏通
4.西村仁志(同志社大学政策学部政策学科准教授)
5.中西紹一
・閉会挨拶(日本環境教育フォーラム理事長 岡島成行)

【情報交換会】(19:00〜20:30)
太刀川記念館3階多目的ホールロビー(参加費:2000円(予定))

主 催:立教大学ESD研究センター
共 催:公益社団法人日本環境教育フォーラム(予定)
    NPO法人日本エコツーリズムセンター
    NPO法人自然体験活動推進協議会(予定)
調査協力:㈱日能研
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お申込み方法:シンポジウムへの参加は、事前のお申込みが必要です。
ESD研究センターのホームページ
http://www.rikkyo.ac.jp/research/laboratory/ESD/index2.html
に設置された申込みフォームよりご登録ください。
また、電話やFAX(03-3985-2686)、Eメール(esdrc@grp.rikkyo.ne.jp
などでお申し込みの場合は、「1.氏名、2.所属、3.連絡先」をお知らせくださ
い。

お問い合せ先:
立教大学ESD研究センター(担当:照沼)
住所:171-8501東京都豊島区西池袋3-34-1 電話&Fax:03−3985−2686
 E-mail:esdrc@grp.rikkyo.ne.jp 
 URL:http://www.rikkyo.ac.jp/research/laboratory/ESD/index2.html