Colors of Nature

今期の修士論文を読んで(2)〜論文に書く「研究の目的」について

修士論文公聴会で、ある院生にこんな質問をした。「京都から富士山の頂上を目指す研究ですね。しかし研究の成果として、富士山の8合目まで行けたのか。5合目までなのか、はたまた富士宮までか、浜松なのか、もしかすると大津あたりにいるのかわからない。あなたはどこまで行ったつもり?」
つまり「研究者が人生をかけて追い求めるテーマ」みたいなものを「この論文の目的」に書いちゃいけない。研究の目的で「京都から富士山の頂上まで行く」と書いてあるのに、結論では「今回の論文では大津までしか行けなかった」という状況では、論文を書いちゃいけないでしょ。
つまりそれは「本研究(論文)の目的」の設定が誤っている。京都から大津まで行けてるんだから、「この論文では大津まで行くことが目的」と書いておけばいい。
研究が終盤になって結論が見え始めてから、論文の「研究の目的」を書き換えることもできる。
さすがに、研究費をとっての研究だと研究目的を最初に明示しているわけなんで、そういうわけにはいかないかもしれないが前期課程の修士論文なら、いっこうにかまわない。
うちのゼミ生(今回は3名が提出)だって、年末になって自分の研究から見えた成果から論文の結論を書き、それに伴って当初の「研究の目的」の文章を微調整している。そして「題目変更届」を出して論題を変更している。
「本研究の目的」で書いたことを100としよう。そして研究の成果(結論)が100だったとする。研究の目的は100%達成されたことになる。いいことのように思える。しかし、実際にはそんなパーフェクトはあり得ない。
目的が100なら、実際に行き着けるのは90とか95。あるいはそのように目的を設定しなおす。そうすると残り5とか10という部分が出てくる。あと5とか10ができれば100にたどり着けるわけだ。それが「本研究の課題」(「本研究に残された課題」)ということになる。そして研究の結果100が見えてくると、130や200、300が射程に入ってくる。これが「この研究の展望」ということになる。
まあ、こんなところが、「研究の目的」と結論、研究の課題と展望の関係だと思っている。
蛇足だが、わがソーシャル・イノベーション研究コースでは実践型研究、とりわけ社会的なプロジェクトの実践を通じて研究し論文を書いていくことになる。院生の勘違いがあとをたたないのが「研究の目的」と「実践の目的」を混同してしまうこと。
実践の目的なので、例えば「持続可能で、すべての人間が公平公正な社会を実現する」なんてこともあるでしょう。しかしこれは研究の目的にはならない。ここまで読んでいただいた方にはわかるだろう。
同様に論文の終盤に「この研究の課題」と書いて、そこに「実践の課題や展望」を書いちゃう院生がいる。「今回は京都市**区での実験的取り組みだったが、今後は市内全域でのサービスインを目指したい。その後は全国展開をめざす。」いやいや心意気は立派なんだが、、、、。
まあ、こういう「実践の課題や展望」は、自身の将来やキャリアデザインとあわせてあとがき風に書いていただければ結構です。